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東京高等裁判所 昭和35年(く)51号 決定 1960年5月19日

少年 W(昭一六・七・二五生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、(一)、原決定第一の事実については、少年には、本件匕首類似の刃物を携帯しているという認識がなく、又原決定第二の事実については、本件はいわゆる和姦であつて、強姦ではないから、いずれも犯罪を構成しないものであり、なお原決定第三の事実については、少年は集合の連絡に従事しただけで、事前に逃げてしまつたのであるから、幇助罪を構成するに過ぎないものであるから、原決定には、決定に影響を及ぼす重大な事実の誤認があつたものというべく、又、(二)、少年の家族等が少年の保護に万全を尽すことを誓つているのに、少年を中等少年院に送致した原決定の処分は著しく不当であるというのであるが、

(一)については、原決定が認定した第一ないし第三の各事実は、一件記録(昭和三四年少第二一、八八四号、同年少第二二、四一五号及び昭和三五年少第二、八七六号各少年保護事件記録)によつて、すべて十分に認めることができ、記録を精査しても原決定がした各事実認定には、所論のような、決定に影響を及ぼすべき重大な事実誤認の疑はなく、(二)については、一件記録(前示各少年保護事件記録及び少年に対する少年調査記録)を精査し、これに現われた本件各非行事実の内容、少年の年令、性行、経歴、家庭の事情、交友関係等を総合考察するに、少年は前に強盗等保護事件により試験観察に付され、次いで保護観察に付されたことがあつたが、その後原決定第一及び第二の非行を犯し、そのため再度試験観察に付されたにもかかわらず、更に原決定第三の非行を犯した実情に徴すれば、少年を中等少年院に送致した原決定の処分は相当であつて、著しく不当のものとは考えられない。

従つて、本件抗告はすべて理由がないから、少年法第三三条第一項後段、少年審判規則第五〇条に則り、これを棄却することとして、主文のように決定をする。

(裁判長判事 井上文夫 判事 久永正勝 判事 河本文夫)

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